薮宏太(Hey! Say! JUMP)圧巻のセリフ量で焦燥と向き合うミュージカル作家を熱演
tick, tick…BOOM!:2001年オフ・ブロードウェイを皮切りに、日本、イギリス、カナダなど各国にて上演。2021年には映画化、アカデミー賞2部門でノミネートされた話題作。名作『RENT』を生み出しながら、開幕日寸前に急逝した伝説的ミュージカル作家、ジョナサン・ラーソン。彼の経験を元に彼自身の、他人に否定されても譲れない夢への情熱、未来への焦り、不安、葛藤を素晴らしい楽曲で綴ったミュージカル。
【マイケルを演じたリチャードからのスペシャルコメントはスクロールダウン】
1990年ニューヨーク。ミュージカル作家として成功を夢見るジョン(薮宏太)は、アルバイトで生計を立てる日々。30歳の誕生日を目前に、将来への不安がだんだんと大きくなっていた。ダンサーを辞めることを考えていた恋人のスーザン(梅田彩佳)は、ジョンにも一緒にニューヨークを離れることを提案する。俳優を目指していた親友のマイケル(草間リチャード敬太)も、見切りをつけビジネスマンに。成功した彼はジョンに就職をすすめる。夢を諦めるべきなのか...ジョンは葛藤しつつも、業界人を招いた試演会に望みをかける。
客席に入るとすぐ、ジョンが”暮らしている”姿が目に飛び込んでくる。古くて狭い、生活感あふれる部屋の中で、彼が寝転んだり口笛を吹いたり、ピアノを弾いたりと作曲に励む姿がリアルに描かれている。その部屋で過ごす彼の日常を覗いているような感覚が、観客の心を引き込み、次第に時を刻む音「チクタク」が不気味に響き始める。この音が、ジョンの焦りや葛藤を象徴するかのように観客に迫ってくる。
突如として暗転し場内は沈黙に包まれ、観る者を不安にさせるほどの「間」が続いた。その後、薮演じるジョンが観客に向けて訴えかけるように『30/90』を歌い始める。草間も登場し、ずっしりとした彼の歌声は、歌唱力の高さを一瞬で感じ取ることができる。アンサンブルがいない三人だけの舞台という構成に対しては少し懐疑的であったが、梅田が加わり三人が揃ったとき、このメンバーだけで十分だと感じさせられた。特に『SUNDAY』のシーンでは、草間の低音が会場に染み渡り、続く『NO MORE』での薮とのハーモニーも絶妙であった。
また、この三人で全ての役を演じ分けるという構成上、薮のセリフ量は非常に多く、膨大なセリフを一度も噛まずにこなす姿には感嘆させられた。彼が演じるジョンの焦りや苛立ちも、舞台上でリアルに表現され、観客に伝染する。さらに、演出には「間」を活用する場面が随所に見られ、ジョンの内面の不安や葛藤が効果的に強調されていた。
スーザンとジョンの口論シーンは、梅田の自然な演技がリアリティを伴い、本当の喧嘩を見ている様。『COME TO YOUR SENSES』での彼女のパフォーマンスも秀逸で、ジョンに対するスーザンの愛情と葛藤が見事に描かれていた。このシーンでの薮の立ち振る舞いも、ジョンの切ない心情が表情や姿勢から伝わってきて、胸に響いた。
物語が進む中で、ジョンが抱える感情が爆発しマイケルとの口論に発展するシーンは、緊張感が漲り、最終的にマイケルがHIV陽性であることを告白する場面へと続く。マイケルが葛藤しながらも病を打ち明ける瞬間、その内面の揺れ動きが観客にも伝わる演技で、感情の緊迫感が増した。
そして、『WHY』を泣きながら弾き語るジョンの姿は心を突き刺し、客席からはすすり泣きが聞こえるほど。頬を伝う薮の涙が、この瞬間の感情を鮮明に映し出していた。
『tick, tick…BOOM!』は終始緊張感を保ちながら、観客を物語に惹きつけ続ける作品である。20代後半から30代の観客にとって特に共感を呼ぶ内容であり、現代社会で夢や将来に悩む人々にも響くメッセージ性を感じさせる。楽曲はどれも軽快で、自然とリズムに乗ってしまう。ノリの良い音楽と共に、観客の心に刻まれる作品であった。
今回の作品を通じて、ご自身のどんなところが一番成長したと感じますか?また、今後それをどう活かしていきたいか、新たに見えた来年の目標などはありますか?
マイケルは僕がまだジュニアだった(デビュー前/Aぇ! groupが結成前)時に、心の奥で静かにささやいていた「もし…」の声にどれだけ近いかを考えると、非常に興味深いキャラクターだと思いました。
劇中で彼は、ジョンの対照的なキャラクターとして描かれていて、いわゆる「理性の声」という存在になっています。若い頃のクリエイティブな追求を捨て、より成功しやく安定した合理的なキャリア人生を選び、そしていつもジョンにも同じように進むべきだと助言している。このキャラクターを演じて、何年か前に似たようなことを言ってくれた人々からの、深い愛情や思いやりをより深く理解することができる一方、ジョンがアーティストとしての夢を諦めたくないという決意にも共感できました。
目標としては、とにかく新しいことにできるだけ多く挑戦し続けたいです。Aぇ! groupはまだデビューしてからほんの半年くらいだから、やりたいこととかを考える時間すら全然足りてないって感じです。これからメンバー5人全員がグループとしても、個人としても積極的に活動を続け、与えられたチャンスを最大限に活かしたいと思っています。
Photo Credit :[東宝演劇部/シーエイティプロデュース © STARTO ENTERTAINMENT. Used with permission.]
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