岩本照(SnowMan)演出、美少年初の単独主演舞台。”若者が中心となって若年層に届けられている事”に大きな意味を感じ、これからの日本にぜひ届け続けて欲しい作品
舞台『少年たち』:1969年の初演以来、進化を遂げ『少年たち』シリーズとして繋がれてきた。 Kis-My-Ft2、A.B.C-Z、ジャニーズ WEST、 SixTONES、Snow Manらもジャニーズ Jr.時代に出演。“若手の登竜門”的存在で、 2019年には初の映画化された。今年は美 少年(参照 インタビュー: 美 少年)が単独主演、内博貴が出演し、岩本照(Snow Man)(参照 インタビュー: 岩本照)が単独で初めて舞台の構成・演出・振付を手掛ける。少年たちの葛藤や衝突、その先にある友情や愛を描いた清新な舞台。
20XX年、戦争により崩壊した日本。生き残るために罪を犯した少年たちは刑務所に収監される。赤と青の房に分かれた彼らは、互いをライバル視しながら喧嘩に明け暮れていた。看守長(内博貴)に暴力で支配され監獄から出られないと気付いた少年たちは、脱獄を決意する。
開演前、ステージ上を行き交う人々。談笑したり、水やりをしたり、平穏な日々を顕示している。一転、開演後は激しいダンスで戦争に巻き込まれた社会を表現した。次々に登場する投獄された少年たち。互いに対立する青の房のナス(那須雄登)、カナサシ(金指一世)、フジイ(藤井直樹)と、赤の房のリュウガ(佐藤龍我)、ウキショ(浮所飛貴)と、赤の房に属すも記憶喪失により子供返りし、対立を拒むイワサキ(岩﨑大昇)。6人で歌う「俺たちは上等」の大サビのアカペラのハモリが美しい。随所に散りばめられた赤と青の照明が、2つの房の対立を示していた。
以前は仲の良かったナスとウキショが本音でぶつかり揉み合いになるシーンでは、2人の白熱した組合が観客をどんどん物語に引き込んでいった。ステージ奥に映った2人の大きな影の演出が、印象的に残る。対照的に、罰ゲームをかけた大縄対決のコーナーは、会場全体から笑顔も溢れた。メリハリのある楽しいひと時だ。
看守長に命じられ、カナサシがナスを撃とうとする場面は、緊迫感に満ちていた。少年兵であったことを明かされ、命を絶とうとするカナサシの声と肩の震えが悲しみの重さを象徴している。そんな彼に「甘ったれるな」と放つリュウガの姿も、心に響く。
少年たちに怒号を浴びせ暴力で支配する看守長に、内氏の圧倒的存在感が光る。「人の気持ちが分からないの!?」と涙ながらに訴えるフジイには心打たれた。それぞれの夢を語り脱獄を決意した6人。アクロバットや力強いダンスで「闇を突き抜けて」の曲に合わせ、想いの強さを表現した。これまで印象的だった赤と青の照明が紫になった演出から、対立していた2つの房が1つになった様子ことが読み取れる。
マイケル・ジャクソンの「ゼイ・ドント・ケア・アバウト・アス(They Don't Care About Us)」を彷彿させる音楽と振り付けに合わせた看守達の行進から始まった第二幕。房から脱出し、逃げ回る6人の走る姿にあふれ出る各々の焦りや不安。逃げ惑い怯えるイワサキの仕草からは、子供らしさが窺えた。階段上の本格的なファイトシーンもあり、こちらまでも手に汗握る。自ら囮になったイワサキは、2階客席に突然現れた看守長に撃たれてしまう。高さ3m程の塀から背面に落下する、本格的なスタントだ。後に連行された看守長の帽子の下に隠れた潤んだ瞳が、目に焼きついた。
数年後、刑務所の跡地で再会する5人とイワサキの幻。晴れやかな笑顔が目立ち、ハッピーエンドかと思われた。突如始まる、5人の戦争に対する消えない悲しみが詰まった群読。今まで和かだったイワサキがひまわりを切り倒し、切り口とタイトルロゴの赤い箇所がリンクするエンディング。戦争の傷の深さを物語り、心に焼きつく結末だった。
美 少年の演技力、歌唱力、スタント・ダンススキル、本編後のショータイムで魅せたパフォーマンス力は目覚ましい。まだまだ若い彼らが、いつの間にこれ程の実力を培ったのかと驚きが絶えなかった。今後の美 少年の活躍に期待したい。また、演出家の岩本氏は見事に彼らの個性を引き出し、引き立ていた。6人それぞれに明白な役柄と見せ場があるのに、ストーリーの軸がしっかりしている。舞台「少年たち 闇を突き抜けて」はメッセージ性も強く、”若者が中心となって若年層に届けられている事”に大きな意味を感じた。見どころも豊富で、何度でも視点を変えて見直したい。これからの日本に、ぜひ届け続けて欲しい作品だ。
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