"自分が見たものを自分なりの解釈で伝える為に海外に勉強しに行った。制作との二刀流でいきたい"
岩本照:10月4日に開幕した美 少年主演の舞台「『少年たち』 闇を突き抜けて」(参照 公演レポート:「少年たち」 闇を突き抜けて)では、単独で初めて舞台の構成・演出・振付を担当。過去の舞台「少年たち」シリーズや、2019年に映画化された同作にも出演した。「少年たち」は1969年の初演以来、進化を遂げながら現在まで繋がれ続けている。岩本氏は2020年にデビューしたSnow Manのリーダーで、音楽活動をはじめ、舞台、バラエティ番組、YouTube、映画や雑誌など、多岐に渡り活躍中。主な代表作はミュージカル「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(2022年)、映画「モエカレはオレンジ色」(2002年)、「映画おそ松さん」(2022年)など。また、Snow Manのレギュラー番組として毎週金曜TBS系「それSnow Manにやらせて下さい」、毎週木曜文化放送「Snow Manの素のまんま」に出演中。フィットネス系雑誌「Tarzan」では、2018年より『筋肉吟遊詩人・岩本照 裏切りの筋トレ・メソッド』を連載している。
今回舞台「少年たち」で、初の単独での舞台構成、演出、振り付けをご担当されていますが、この仕事が決まった時の心情、リハーサルで一番大変だったこと、また実際やってみていかがでしたか?
実際にオファーという形で頂いて、純粋に自分もやったことないジャンルで。今までグループの振り付けもやらせてもらったりもしていたんですけど、「演出構成ってどんな感じなんだろう」の次の自分の思考的に、「難しそう」よりも「面白そう」っていう思考が勝ってしまったので、その自分の直感に従って2つ返事で「あ、いいっすよ」みたいな感じ。割とラフにお話が最初来て、動いていったっていう感じですね、決まった時は。
台本の打ち合わせとか、ちゃんと出演者の人たちに台本も配るまでに、何回も直して書いて、直して書いて、を繰り返してもらってて。その時に僕も意見を言わせてもらっていたりもしていたので、そこら辺から「あ、『少年たち』やるのか」っていう、より実感がじわじわ湧いてきました。
難しかったところは、やっぱ自分自身を納得させるのですね、一番。それはやっぱ ”「少年たち」に出演していた人”っていう部分が引っかかっていたのか、「なんかこれだと面白くないんだよなぁ」とか、「このままいったら普通なんだよね」っていう感じが、振付も、芝居も、歌も、映像も、照明にしても「なんか面白くねえな」って出てくる。自分を「いやこれマジでやべぇじゃん」って思わせられる。誰かにそれを相談したりはないですけど、自分自身が納得いくところを追求しに行くっていうところが、難しかったし面白かった点でもあるかな。
実際公演が始まって出来上がったところを観られて、いかがでしたか?
初日の公演を一番後ろで観てた時に、すごい不思議な気持ちになって。正しい表現かどうか分からないんですけど、率直に感じたのが「自分の葬式を一番後ろで見てる」みたいな気持ちにちょっとなったんですよ。自分の名前が出たり、自分が作り上げた作品を見て面白い、笑ってくれる、泣いてるお客さんを一番後ろから観てた時に、皆んなから自分が見えてないみたいな。完全裏方に回ってるっていうところで、「もう自分がやるべきことは終わった」っていう気持ちと、そこで「いやぁ、こうだったね」、「いや、そこってこうじゃない?」ってその話してる答えは全部僕は知ってるんですけど、そのお客さん同士の会話に、僕は視界にも入らないっていう不思議な感覚になって。この感じってすごい面白いし、すげぇ癖になるなって。ただ達成感とか、やりきって「よし、後はもう皆んな頑張ってねー」って感覚とはまたちょっと違った、「こういう感じなんだ」っていう感じでしたね。初日明けた時は。
お話を聞いていて、「すごいな」と鳥肌が立ちました。
本当ですか?
はい、お葬式の話とか想像もつかなかったんで…
自分ももちろん経験したことないですけど、自分の葬式は。でも、例えて出てくるのがなんかその感じだったっていうか。そうですよね、不思議な感じでした。
美 少年の皆さんと今回作品を作られて、始まる前「どういう風になるかな」って思っていたことと、実際やってみていかがでしたか?
元々接点がすごくあるっていう訳でもなかったので、僕と美 少年に関しては。どこまでどういう風に踊れるとか、どういうお芝居をしてるとかって情報を敢えて一切入れずにリハーサルに臨んで。やっぱり皆んな真面目でしたし、「より良いものをお客さんに届けたいんだ」っていう思いは僕とも合致していたので。その辺りを「あいつうるせぇけど、ここまでやんなきゃ満足しないだろうな」って思われてるかなって、でも引き出して。「リハーサルで70%とか80%で本番100%出せることは絶対ない」って言って。リハーサルの段階から120%とか150%まで振り切って、やり過ぎだってぐらいまでやって。本番はやっぱり転換、色んなことで事故に繋がるかも知れないっていう余白も残した上で、お客さんにもちゃんと全力の芝居を届ける。70%、80%ぐらいでいて欲しいっていうペース配分から何から話して、やらせてもらって。
あと「俺ら結構踊りたいんです!」みたいな熱い思いをすごい伝えられて、ショータイムで彼らの新曲の振り付けもやらせてもらってるんですけど。結構、「俺らマジで踊りたいんでマジお願いしますね!」みたいな感じで言われて、その気持ちを汲んで作った結果、皆んなの反応も今までの美 少年っぽくないっていうのが逆に良かったみたいで。すごい「やべぇ!」とか「かっけぇ!」みたいになってくれていたので、「これ作った身としても良かったな」って思います。
本番始まって終わりじゃないって感じで、僕も何回か足運んで観に行って。「ここはすごい良かった」、「ここはもうちょいこうして欲しい」っていう、”初日の幕が来たら終わりじゃない”っていうのは、皆んなとコミュニケーション取っていました。「よりその日の100%を出して、『あと3、4回やりたかったな』ぐらいで千秋楽が来るぐらい、色んなことを試して欲しい」って伝えて。今も絶賛頑張ってる頃だと思うんで。千秋楽は「よくこの期間頑張ったな」って後輩たちを観に行ってあげようかなとは思ってますね。
Snow Manのメンバーの皆さんから、今回のお仕事が決まった時に応援メッセージとか、お言葉はありましたか?
そうですね、何人かはやっぱり「自分たちが出てた思い入れがある作品に、そういう違う形で携われるのは本当に凄い」っていう風に、誰かと話してるのを聞きました。皆んな「お前マジ頑張れよ」とか、そういうのはそれぞれ思ってくれてるとは思うんですけど。
でもゲネにメンバーの深澤(辰哉)が観に来てくれて。芝居のこととか、ただ「良かったよ」だけじゃなくて、「ここもっと照がこういう風にしたいんじゃないの?」、「じゃあ俺なりの言葉だったら伝えられるかな?」みたいな感じですごい親身になってくれたりとか。
あとこの前、阿部(亮平)が観に行って、僕の演出に対して疑問を持った点、「なんでこれこうしたの?これってどういう意味があるの?」、「それどう思ったの?」みたいな”演出家”と”お客さん”っていう話と、あとは”演者”。「いや、そこのセリフは揃えて欲しいよね」とか、”やってた側の人”の話っていうのは阿部ともしたり。やっぱり自分が作った作品を観に行ってくれるって、すごい嬉しかったですね。
皆さん仲が良いから改まって直接言うのは恥ずかしいけど、そうやって実際行動に移してくれるんですね。
そう、行動だと思います、やっぱ。言葉も大事ですけど。
今回の「少年たち」のお気に入りのシーンと、こういうところを観ていてくれたら嬉しいなとか、そういう点を教えて頂けますか?
お気に入りのシーンはいっぱいあるんですけど、やっぱりダンスはお気に入りかなって思います。どのシーンを取っても楽しいのも、ちょっと苦しかったり踠くのも、その表現が言葉とか、言葉じゃなくパフォーマンスで伝えるっていうのは、やっぱり「少年たち」の作品ならではだと思います。すごい個人的に「うわ、もらったわ。もうこの『少年たち』を俺もらった」って思ったのは、やっぱエンディングとエンドロールの入り方。自分の中で思い付いた時に「やっちゃったね」って思って。面白いし、これを早く皆んなに観てもらって「ああだこうだ」言ってもらった方が、「あぁ、もう大丈夫だね」っていう風に自分自身でなった点、こだわった点は本編ラストの方ですね。
少し重い話になってしまうかも知れないんですが…岩本さんは「少年たち」に出演もされていて、実際この作品に”出演される前”と、”出演されていた時”と、今回”演出された時”、それぞれのタイミングで戦争に対する考えや印象など、変化はありましたか?
そうですね。自分が戦争絡みのお話に出させてもらって、でも戦争を経験したことないし、でも「戦争を経験したことない人間の言葉は、戦争を経験したことない人間にも届く。戦争を経験した人たちには届かないかも知れないけど、自分たちのことを観に来てくれた人たち、自分たちのことを知ってくれている人たちには、僕たちが”戦争っていうものはこうなんだ”っていうのを解釈して、お芝居を通じてでもメッセージを届けられることはある」ってところに自信を持ってステージでやらせてもらっていたので、その時はとにかく伝えるっていうのがメイン。戦争もそうだし「平和な世の中ってこんなに素敵なことなんだよ」っていうのを歌、芝居、踊り、表情で、もう全てのエネルギーでお客さんに飛ばすってのが、やっぱその時すごい思ってたことで。
今回僕は出ないので俯瞰で見れて、戦争な部分もそうだし、演出、照明とか色んな部分でなるべく自分が出来る、「自分が見たものを、自分なりの解釈で、お客さんに伝える」っていう為に、沖縄のひめゆりの塔に行ったりとか、海外に勉強しに行ったりもしたんです。
戦争は今でも絶えない話だし、日常である普通の風景が一変するっていうのはやっぱどうしても作りたかった。こんな平和だったのに、それぞれの事情があったのに切り裂かれるっていう惨い状態を、誰もが経験したくないのに経験せざるを得ない状況下に、世界のどこかでいるっていうのを、表現できる舞台でもあるなって思ったので、戦争の部分は無くしたくないなって。
本編ラストの「いつの時代も…」って佐藤龍我が言うセリフがあるんですけど、それ僕が元々言ってたセリフなんですよ。やっぱそこのメッセージはしっかり残したい。そこのメッセージをちゃんと残す為にはっていうので、冒頭あの始まり方にしたかった。
どれだけ聞いてくれる人、こうやってメッセージを伝えられる場に行って、自分が経験したことないことだけど、こういう「平和がいいよね」って言えば言うだけ、そういうのを経験されたり、その最中にいる人たちからしたら、「お前らに何が分かるんだよ」って、絶対なっちゃうことだとは自分でも思ってて。その中でも他人事じゃないですけど、何もしないよりはそうやって「ちゃんと思ってますよ」って思いを言葉だったり、何かで発信するのは絶対大事だと思うし。
そこに対して「ああだ、こうだ」言われても結局皆んな手を取り合って、「銃じゃなくて掴むのは手にしようよ」って、言語が違っても。それぞれ家族がいてとか、「そんなに長くない人生の中で、争っててもしょうがないじゃん。争ってるほど人生長くないよ」って僕はすごい思うので。「平和とは?」っていう感じになっちゃうんですけど。一つを手に入れるには、何かが争わなきゃいけない、色んな形で争わなきゃいけないのはあるけど、命を落とすまでの事にするのはどうなの?ってやっぱり自分ですごい毎回考えてたんで。ただ「戦争って嫌だよね」だけで終わらない。
自分が伝えるよりも、美 少年とかその下のジュニアの子たちの言葉の方が、その人たちのファンに届くんだったら、今は経験してないだけで、いつ日本がそういう状態になるか分からないっていう危機感と、より今の時間を皆んなが大事にしようって思ってもらえるものにする為には、見て見ぬ振りは出来ないなって。
2000何年と言ってないけど、今の日本が急に戦争状態に入るって入り方にしてたら、タイミング的に今ウクライナでも似たような状況になっちゃってると思うし。「でも良いよね。日本は平和だから」っていう感じでいるのも俺は違うなと思うんで。敢えてあの始まり方にしたって感じですね。
今回「少年たち」において初めての経験を沢山されたと思うんですが、その経験を活かして今後どういう風にご活躍されたいとか、新たに挑戦したいみたいことの発見などはありましたか?
自分自身は何かを表現するのもすごい好きなんですけど、やっぱ作るのが好きなんだなっていうのは今回分かりましたね。今回初めてやって、大変なことも多分出てくるだろうなとか、スタッフさんにはこういう言葉で伝えるけど、プレイヤーにはこういう言葉で伝えた方が意思疎通出来るのかな、とか色んな伝え方とかもすごい勉強になりましたし。
やっぱ0を1にするのが好きなんだなってすごい思ったので。もちろん体が動く限り、そういうお話がある限りはプレイヤーでいるつもりもありますけど、自分が出る出ないは別としてもを何かを作り上げて、それが自分が会ったこともない人の気持ちを、ちょっとでも上げてっていうのはすごい素敵だなって、やりがい感じるんで。そういう裏のスタッフさんたちの中に入って、自分も一緒に制作の方にいるのとの二刀流でこれからもいきたいなって思ってます。
海外にいるSnow Manさんのファンの方や、岩本さんのファンの方々にメッセージを頂けますか?
海外の方たちだと直接こうやって会える機会はコンサートとか、でも全然まだ直接会えてないよ、みたいな方たちが多分たくさんいらっしゃると思うんですけど。YouTubeの方でコメントしてくれたり、色んな形で自分たちのことを知って、応援してくれてるっていうのは本当ありがたいです。その人たちに直接会って、エネルギーをバーン!って飛ばしてやりたいなって思っているので。僕たちがやっぱ海外に行くのか、日本でめちゃめちゃ公演数多くやって、海外の方たちに来てもらえるようになるのか。皆んながね、そこで自分たちの踊りとか歌とか観て、「うわぁ、会えて良かった」ってその一瞬かも知れないけど、その瞬間を皆んなが楽しみにモチベーションに生きててくれれば、絶対会える日が来るんじゃないかなって僕は思っているので。これからもSnow Manをよろしくお願いします。
Photo Credit :[N/A]
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