ミュージカル『キャッチ·ミー·イフ·ユー·キャン』:スティーヴン·スピルバーグ監督、レオナルド·ディカプリオやトム·ハンクスが出演し話題となった名作映画のミュージカル版。2011年にブロードウェイに進出し、トニー賞で主演男優賞を受賞、計3部門にノミネートされるなど高い評価を得ている。日本では2022年に岩本照(Snow Man) 主演で上演され、演出の上田一豪が描くスタイリッシュなダンス・心に残る歌唱で大好評を博した。初演に続き主役の天才詐欺師フランクを演じるのは岩本照。確かな歌・ダンス・演技力を魅せる。フランクを追うFBI捜査官ハンラティは、日本のドラマ·映画界には欠かせない吉田栄作が続投。
1968年のニューヨーク州。16歳のフランク(岩本照)、父(岸祐二)、母(春野寿美礼)の幸せな生活は父の事業失敗により崩壊。一人マンハッタンへと渡ったフランクは、身分証偽造し偽パイロットとして、偽造小切手片手に世界中を旅する生活を始めることに。FBIのハンラティ(吉田栄作)は捜査に乗り出す。追われるフランクと追うハンラティの間には、いつしか奇妙な友情が芽生え始める。捜査を逃れながら医者へと姿を変えたフランクは、看護師(仙名彩世)と恋に落ちる。温かい家庭を築こうと結婚を誓った矢先、ハンラティの捜査の手が再びフランクに迫る…。
ミュージカル『キャッチ·ミー·イフ·ユー·キャン』の公演は、観客を冒頭から物語の世界に引き込む力強いオープニングで始まった。主人公フランクを演じる岩本照が「ミュージカルだ!」と声高らかに叫ぶと同時に、ステージ上に一気に華やかな空気が広がり、オーケストラの壮大な音色が劇場全体に響き渡る。この瞬間、観客は物語の渦中へと誘われ、岩本の圧倒的な存在感とパフォーマンスが際立ち始めた。
岩本はフランク役としての高い演技力と歌唱力を見事に発揮していた。特に、彼の歌声は安定感があり、声量も十分。高音域での伸びやかさが彼の役柄に若々しさと勢いを与えていた。さらに、高身長を活かしたダンスは、彼の長い手足が舞台上でしなやかに動き、観客の視線を捉えて離さない。
フランクの複雑な生い立ちが描かれるシーンでは、岩本が自らナレーションを担当し、彼の語りのスピードと感情表現が観客を驚かせた。また、観客を引きつける彼の技術は、フランクが人々を欺く天才詐欺師であることを巧みに表現している。舞台上で観客と頻繁にアイコンタクトを取りながらの演技は、フランクが人々の心を掴む術を持つ人物であることを強く印象づけた。特に、家族が離散するシーンでは、岩本の感情豊かな歌声と演技が舞台に深い悲しみをもたらし、観客の心を打った。
物語の中盤では、フランクを追うFBI捜査官ハンラティとの対立が物語を牽引する。吉田栄作が演じるハンラティは、彼の低く渋い歌声が印象的で、重厚な存在感が物語に緊張感を与えていた。吉田の演技は、フランクとの追走劇における緊迫感と、次第に芽生える奇妙な友情を見事に表現していた。一方、ブレンダ役の仙名彩世は、その力強い歌声で看護師としての芯の強さを表現しており、フランクとの関係に一途な思いを持つ彼女のキャラクターをより一層引き立てていた。
特に印象的だったのは、フランクとブレンダが歌うデュエット曲『世界の七不思議』のシーンである。二人の美しいハーモニーが互いへの純粋な愛情を感じさせ、観客の心を揺さぶった。岩本と仙名の歌声が見事に調和し、二人の感情が音楽を通じて一体となる瞬間は、このミュージカルの中でも印象的な情景であった。
物語のクライマックスでは、フランクが追い詰められる展開が続く。プロポーズのシーンでは、アンサンブルキャストが一斉に登場し、盛大にフランクを祝福する演出が舞台に一層の華やかさを与えていた。祝福のムードとは対照的に、フランクが内に抱える切なさが舞台にメリハリを生んでいた。フランクが全てをブレンダに打ち明け、「行かなきゃ!」と去るシーンでは、緊迫感が高まり、観客は彼の逃避行がどう終わるのか息を飲んで見守っていた。
終盤のハイライトは、仙名が歌い上げた『Fly, Fly Away』であった。彼女の力強くも繊細な歌声が劇場全体に響き渡り、感動の余韻を残す。暗転した後、銃声と共に再び空港が舞台に現れるシーンは、物語の冒頭を彷彿とさせ、フランクとハンラティの最終的な対決が描かれる。フランクが逮捕されるも、ハンラティによって新たな人生の道が開かれるという結末には、深いメッセージ性が込められていた。
ミュージカル『キャッチ·ミー·イフ·ユー·キャン』は、軽快なメロディと共に展開するエンターテインメント性の高い作品でありながら、人生の選択や葛藤を深く描いている。岩本照を中心としたキャスト陣の素晴らしいパフォーマンスが、観客に強い印象を残し、随所で拍手や歓声が絶えなかった。カーテンコールでは、岩本が満面の笑みを浮かべ、彼自身もこの作品を心から楽しんでいる姿が見て取れた。この舞台が観客に与えた満足感は非常に高く、多くの人々に愛され続ける作品であることを強く感じさせた。
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Photo Credit :[© STARTO ENTERTAINMENT. Used with permission.]
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