何度でも観たくなる!ハッピーになれる心躍るエンターテインメント
ブロードウェイ・ミュージカル「天使にラブ・ソングを~シスター・アクト」:愛され続ける映画『天使にラブ・ソングを…』で主演を務めたウーピー・ゴールドバーグ自身がプロデュースし、ミュージカル化が実現。2011年にブロードウェイで開幕するとトニー賞5部門にノミネート、世界で600万人以上を動員し大ヒットを記録。生き方が異なる女性たちが歌と音楽を通じて友情を育む感動のストーリーは、映画のまま。ミュージカルならではのエネルギッシュな生歌が、何度でも味わいたくなる劇場体験を与えてくれる。2015年の初来日と2017年の再来日公演は連日満員。今回7年ぶりに、新演出とグレードアップした来日版史上最大のスケールで帰ってきた。
ディスコフィーバー真っ盛りの1977年、クリスマスイヴ。フィラデルフィアでスターを夢見るクラブ歌手・デロリスは殺人事件を目撃してしまう。主犯である愛人のギャングに命を狙われ、修道院に逃げ込むことに…。規律正しい生活に馴染めないデロリスだが、ある日、聖歌隊の特訓を任される。聴くに堪えなかった聖歌隊は瞬く間に上達し、閉鎖危機にあった修道院は一気に注目の的に!ところが、その噂はギャングの耳にまで届いてしまい…。果たしてデロリスは、この危機を切り抜けることができるのか!?
「Welcome to Philadelphia!」クラブで歌うデロリスの歓迎が、場内に響き渡る。煌びやかな照明がステージを覆い、『Take Me to Heaven』で晴々しく開けたオープニングは、瞬く間に観客の心を掴んだ。観客はフィラデルフィアの華やかな夜の世界に引き込まれ、デロリスの夢と希望に満ちたパフォーマンスに釘付けとなった。
続く『Fabulous, Baby!』では、デロリスの伸びやかで夢と自信に溢れた歌唱が響き渡り、ハイトーンも美しく観客を魅了する。彼女のエネルギッシュなパフォーマンスは、彼女が真のパフォーマーであることを証明し、観客に強い印象を残した。
殺人現場を目撃するシリアスなシーンも、この作品の良いところであるコメディ要素が巧みに取り入れられている。ド派手な容姿のデロリスが修道院という全く異なる世界に飛び込むと、そのギャップから生じるユーモアが観客を笑わせた。修道院長とのアウェイ感は特に印象的で、観客席からは笑いが絶えなかった。
修道院での食事のシーンでは、カップやスプーンで音を鳴らし、シスターたちが歌い踊る姿が楽しく描かれる。こちらのナンバー『It's Good To Be a Nun』はシスターたちのコミュニティの結束力を感じさせるとともに、デロリスが修道院の生活に圧倒される様子を愉快に表していた。
シスターたちの歌に磨きがかかっていく様子が見事に描写された『Raise Your Voice』。コーラスがどんどん盛り上がり、気付くと体がリズムに乗っていた。デロリスの指導の下でシスターたちが一体となり、自信を持って歌う姿が感動的だった。シャイで小声だった見習いシスターのロバートが、ノリノリで高音を力一杯歌い上げる姿は圧巻。彼女の成長とその歌声は観客の心に響いた。照明やカラフルになったシスターの衣装も必見で、視覚的にも楽しめる演出が施されている。
今回のハイライトとも言えるパフォーマンスを魅せたのはソフィー・キムが歌うロバートの『The Life I Never Led』。大サビの伸びやかな歌唱は圧巻で、会場からも大きな拍手が湧いた。彼女の歌声は力強く、観客に深い感動を与える。
ハッピーエンドを迎えた教会にはミラーボールが登場。シスターたちが笑顔いっぱいに歌い踊るクライマックスは、作品を象徴する晴れやかなシーンだ。観ているだけで心が躍り、最後は客席に降り立ったシスターたちが真横で歌い踊り、最高の締めとなった。このフィナーレは観客との距離を一気に縮め、共に楽しむ一体感を生み出していた。
映画の物語に忠実な一幕に比べ、オリジナル要素の多い二幕ではエディとの恋愛ストーリーなど、ミュージカルならではの展開も満喫できる。確かな歌唱力とコメディセンスで、原作ファンからミュージカルファンまで幅広い年代に愛される、観ていてハッピーになれる作品である。ブロードウェイの魅力を存分に感じられるこの公演は、何度でも観たくなる心躍るエンターテインメントであった。
Photo Credit :[N/A]
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