「再演希望No.1の舞台で再び魔女に!」- 江畑晶慧が語る『ウィキッド』の魅力
江畑 晶慧:劇団四季ミュージカル『ウィキッド』大阪公演(参照: 公演レポート:劇団四季『ウィキッド』- 再び大阪で魔法が動き出す -)でエルファバ役を務めている。江畑は2005年劇団四季オーディションに合格。『ライオンキング』で四季での初舞台を踏み、のちに日本·韓国両公演でナラ、『ウィキッド』エルファバ、『マンマ·ミーア!』ドナ·シェリダン、『アイーダ』アイーダ、『キャッツ』グリザベラなどを演じている。『ウィキッド』は名作『オズの魔法使い』を二人の魔女、エルファバとグリンダの視点から描いた作品。グラミー賞をはじめ数々の栄誉に輝く音楽、壮大な舞台装置が魅力の超大作であり、老若男女を問わず多くのファンを魅了し続けている。
江畑さんはこれまでも『ウィキッド』に出演されてきた中で、今回の公演は”再演希望No.1”という形で久しぶりの上演となりました。そのような作品に参加するにあたって、どんなお気持ちでしたか?
毎日満席の舞台に立たせていただくことは、すごく有難いです。自分自身の”再演希望No.1”だったので、自分の夢も叶った感じです。嬉しくて本当に感謝の気持ちいっぱいで、毎日舞台に臨んでます。
そんな『ウィキッド』、江畑さんにとってはどんな作品ですか?
自分の俳優人生のターニングポイントとなった作品でもあるし、本当に愛してる特別な作品でもあります。札幌以外の全公演地に出演しているので、思い入れが深いですね。こんなに長く同じ役をやらせていただくというのもあって、エルファバ役はすごく特別な存在です。
『ウィキッド』は以前から有名ですが、出演される前と出演されてからどういう気持ちの変化がありましたか?
よく「観る天国、演る地獄」って言うんですが、まさにその通り。観る時は憧れるし絶対演じてみたいと思うんですが、実際に演じてみると、体と喉にはかなりの負担がかかりハードです。「もう着いていけないんじゃないかな」って思うぐらい必死にやらないと、作品の良さを伝えられなくなる。やる側が辛ければ辛いほど、観る側としては天国なんだよって先輩たちにも言われます。まさにそうだなと思っています。
そんな中でも特に大変だったこと、それをどうやって乗り越えられましたか?
私は元々あんまり大声で怒ったりしないので、自分の人生の引き出しに、怒鳴ったり·怒ったりというのがないんです。でもエルファバは社会性が欠けていて、コンプレックスもあり、人に愛された経験がないため、色んなものに反発してしまいます。
だからといって単純に怒鳴ればいい訳じゃない。無理やりその音やテンションだけを覚えて、ただ大きい声で怒鳴ると喉に負担がかかってしまうんです。本当にそう思って、自分の奥底から出てくるものにするということにすごく苦労しました。
稽古でもそうなんですが、たくさん想像して”エルファバがそうならざるを得なかった根本的なところ”をしっかりと理解して、自分の中に入れていきました。私たちはよく「ゼロ幕を作る」と言っていますが、お稽古の段階から”この人のここに出てくるまでの人生”をたくさん考えます。それを考えているのといないのでは、自然と出てくるものが変ってきます。
稽古の中で印象に残ってるエピソードはありますか?
今回、私もすごく久しぶりに出演することもあって、以前のは全部忘れてやってみようと思ったんです。
やはり自分が成長した分、当時とは課題が全然違いました。同じようにやってるつもりなんですが、「今ちょっと冷静に見えるから、もっと自由になっていいよ」って初めて指摘されたり。「これで冷静に見えるの?」と最初は結構戸惑ったんですが、その呪縛を解いて見ると自由にやれたという感覚がありました。
小さ目の稽古場でメインキャストだけで密に芝居稽古をやった時も、芝居の一つ一つのやりとりが本当に楽しかったんです。頂くフィードバックも「なるほど」って思えましたし、すごくプラスになりました。
幕が開きましたが、久しぶりの『ウィキッド』いかがですか?
まず作品が持っているパワーが本当すごいなと思いました。あと、暗くてちゃんと見えてるわけではないんですが、お客様の空気感がしっかり感じられます。作品のテーマが伝わり共感して下さっていることを肌で感じます。改めてお客様と一緒に作品が動いて、進んでいくんだなと思いました。
『ウィキッド』を通じてどんなことを伝えたいですか?
『ウィキッド』はテーマがたくさんあるので、一つに絞るのは難しいのですが、”誰もが共感していただける愛と友情の物語”だと思います。ファンタジーな世界観ですが難しい話ではなく、現実的なことも描いています。それがちゃんと伝わったらいいなと思って演じています。
リピーターの方に注目して欲しい点はありますか?
ユニゾンで同じ踊りをする場面でも、それぞれのペアによって動きが違ったり、一人ひとりを見ても振りが違うところがたくさんあります。そういうところも見ていただけたら面白いのではないかと思います。
他にも『ウィキッド』は同じ衣裳が1着もないんです。みんな衣裳が違うので、そこも面白いです。衣裳がアシンメトリーになってて左右が対称じゃないんですよね。もちろんファッションでもあるんですが、人間の歪んだ部分を衣裳でも表しています。
あと群衆の衣裳では、みんな”こぶ”がお尻とか色んなところに付いてるんです。そのこぶが人間の欲や、本当の邪悪な部分を表現しています。それも注目してみてください。
『ウィキッド』を待ち望んでたファンの方々にメッセージをお願いします。
今回のお稽古では、イチから作り直して、新たな気持ちで挑んでいます。ぜひ劇場にお越しいただき、私たちと一緒に『ウィキッド』の世界で生きて、楽しんで帰っていただけたらなと思います。
江畑さんのように海外から劇団四季への入団を目指す方や、劇団四季の作品に注目されている方にメッセージいただけますか。
劇団四季は実力主義であって、色んな作品を同時に上演してるので、自分が頑張れば絶対夢が叶えられると思います。私のように舞台俳優になりたいと思ってる海外の方々にも、勇気を持って挑んで欲しいと思います。
海外のお客様に対しては、『ウィキッド』は色んな国で上演されていますが、四季では台本に書かれている一つ一つの言葉を大事にしています。四季の舞台だからこそ、細かいニュアンスや細かい内容が伝わりストーリーをもっと楽しめると思うんです。また違う発見があると思うので、ぜひ日本の『ウィキッド』も観に来ていただけたら嬉しいです。
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撮影 野田正明/ Ayaka Ozaki
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