「ステージマネージメント、プロジェクトマネージメント、イベントマネージメントといったスキルを活用して、世界にポジティブな影響を与えることができれば」
エマ・ホーバス:シルク・ドゥ・ソレイユの「アレグリア」(参照: 公演レポート:シルク・ドゥ・ソレイユ「アレグリア-新たなる光-」)でステージマネージャーの1人とし、キュー出し(照明の切り替えなどショー中の様々なタイミングを指示する役割)を務めている。2017年以来、同カンパニーの常設ショー部門とツアーショー部門の両方で働いてきた。エマは世界中の多様なイベント、インディペンデンス・サーカス、地域密着プロジェクトのプロダクションチームの主要メンバーとしても活躍している。
アレグリアの中で一番好きな部分は何ですか?
選ぶのは難しいですね。音楽、照明、サーカスのパフォーマンス。一番好きな部分は、すべての要素が結集して本当に大きな物語の瞬間を作り出すところです。例えば、吹雪や最後のフライングトラピス(空中ブランコ)、みんなが注目する瞬間など。私はその物語を伝えるところが大好きです。
アレグリアのどこをお勧めしたいですか?
あまり多くをお勧めしたくありません。皆さんに驚きを味わって欲しいからです。 アレグリアの一番良い部分は、サプライズです。ただ、もしショーに来るべきか迷っているなら、多様なパフォーマーと技術者によって作られ、あなたの心に長く残るであろう本当に楽しいパフォーマンスを見たいなら来てみて下さい。
リハーサル中の一番難しい部分は何でしたか?
このショーにおいて、私は元の制作リハーサルに参加していませんでした。新しい要素を追加したり何かを変更したりする際に日々リハーサルを行います。一番難しい部分は、細かいところに注意を払うことだと思います。私の仕事では、各部門間の調整を行い、リハーサルに必要なすべてを揃える役割を果たしています。ですので毎日、ショーに含まれる要素や各リハーサルに必要な人物などのスケジュール情報を送り出しています。それを追い続けることは大変です。しかし、私たちには素晴らしいチームがいます。私たちは協力し合い、お互いをサポートし合っています。
他のシルク・ドゥ・ソレイユの作品と比較してどうですか?
以前、私はラスベガスの「ミスティア(Mystère)」で働いていました。また、「クリスタル(Crystal)」ツアーにも参加していました。そしてアレグリアの特別な点は、大規模な団体パフォーマンスとソロやデュオを見ることができることです。今日、ここで特別なバージョンをお見せしました。日本では、私たちは多くの異なるアクトがローテーションで行われている為、皆さんに飽きることなく楽しんで頂きたいと思っています。今日はより多くのソロパートが含まれたショーをご覧頂きましたが、時にはより多くの団体パフォーマンスがあります。どのアクトも素晴らしいので、 是非また見に来てください!また、追加のアクトが増えた為、リハーサル日も長くなりました。私の台本を見ていただければ、北米でのショーに含まれていた主要なアクトと、毎日のショーに応じて切り替える追加のバックアップとローテーションアクトがあります。その為、私たちは非常に気を張って、毎日異なるショーを行っています。
その様な大変な時、どのようにして乗り越えますか?
少し気持ちが沈んだり、ストレスを感じ始めたら、私を元気づけてくれるのは、ショーのキュー出しをすることができる有り難さです。だから、オーディエンスを見たり、オーディエンスの反応を聞いたりして、アレグリアと私たちの仕事を楽しんでいる人々を見ることが本当に報われます。実際、先週、学校からの課外活動で中学生と高校生の満員のグループがショーを見に来て、彼らは楽しみ、興奮していました。大変嬉しいことでした。
シルク・ドゥ・ソレイユの一員としての一番の魅力は何だと思いますか?
二つあると言えます。ショーと人々です。シルク・ドゥ・ソレイユで働いていると、一生涯で出会うことのなかった人々と出会うことができます。シルク・ドゥ・ソレイユで働いていなければ、おそらく日本に旅行に行くことはあったかもしれませんが、ここで9ヶ月間過ごすことはなかったでしょう。今、同僚を見てみると、おそらく8つの異なる国からの人々がおり、それぞれ異なる言語を話し、さまざまな専門分野の人々が知識を共有しています。そして、それは単なるサーカスのパフォーマンスだけではありません。私たちはセットと照明と共に世界を創造する機会があります。森から地下、宮殿まで、アレグリアのこの世界を案内できるのです。ですので、両方が私にとって非常に特別です。
シルク・ドゥ・ソレイユで働くことになったきっかけを教えて下さい。
大学でステージマネージメントを学んでいました。卒業後、幸運な事にシルク・ドゥ・ソレイユでのインターンシップの機会を得ました。それで、3ヶ月間ラスベガスに行きました。「ズーマニティ(Zumanity)」というショーでインターンとして働き、ステージマネージメントチームから学びました。その後、世界に出て、さらにステージマネージメントの経験を積み、キャリアを築いていきました。そしてしばらくして、ラスベガスのミスティアでフルタイムで雇われました。最初はアシスタントステージマネージャーとして始めました。バックステージを管理したり、スケジュールとオフィスのタスクに取り組んだりしました。そしてミスティアでサーカスのキュー出しを学びました。この種のショーでキュー出しすることは、ただの演劇やミュージカルよりも複雑で、挑戦的です。なぜなら、人々の命があなたの手にかかっているからです。私はミスティアでその教育を受け、それは本当に素晴らしかったです。そして、世界ツアーで世界中を旅して見たかったので、最初にクリスタルに参加し、今はアレグリアに参加しました。
シルク・ドゥ・ソレイユでやってみたいことはありますか?
私はシルク・ドゥ・ソレイユの長い歴史を持ついくつかのショーで働く機会があることを本当に幸運に思っています。 ミスティアとアレグリアはシルク・ドゥ・ソレイユの最も古いショーの内の一つです。新しいものを試したり、新しいショーを制作したり、シルク・ドゥ・ソレイユの最前線で働いたりすることを試してみたいと思います。新しいことや今までにないことに挑戦したいです。
今後のキャリアの目標は何ですか?
私の将来のキャリアの目標は、信じられないほど素晴らしい人々と一緒にアートを作り続けることです。しかし、アートを作りながら、アートに触れる機会が少ないコミュニティに恩恵をもたらす方法、それはアート教育を受けられないかもしれない人々、異なるスタイルの学生、またはシルク・ドゥ・ソレイユのチケットを購入する機会が少ない人々に恩恵をもたらす方法を考えたいです。ステージマネージメント、プロジェクトマネージメント、イベントマネージメントといったスキルを活用して、世界にポジティブな影響を与えることができればと思っています。
あなたを尊敬する人々やあなたの仕事を尊敬する人々にアドバイスはありますか?
私は、あなたのキャリアで幸せを感じるものに忠実であることをお勧めします。目標や抱負を持つことは素晴らしいことですが、最終的には、あなたが望む人生を送るためには、あなたを一番幸せにするものを追求することが大切です。お金をたくさん稼ぐことや名声を追求することよりも、あなたを一番幸せにすることを選ぶのが良いと思います。しかし、もし本当にシルク・ドゥ・ソレイユで働きたいのであれば、できる限りサーカスアートに関わり、多くの人々に出会うよう努力してみて下さい。 私が携わった大半の仕事のきっかけは、自分の価値を見てもらえる適切な人を紹介してくれるツテがある人達を、私が知っていた事から実現しました。
Photo Credit: [Matt Chichelli, Cirque du Soleil 2021 / Costumes: Dominique Lemieux
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